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ALSと共に

生き方さまざま

心に翼を〜あるALS患者の記録〜

 私は、東京都西東京市在住、67歳の男子、筋萎縮性硬化症(ALS)の患者です。発病して満6年経ち、7年目に入りました。
 病気の告知を受けた時は頭の中が真っ白になり、何が何だかわからない混乱の極みに達した状態でした。そして考えることは「私の人生もこれで終わりか?」「それにしても、なぜこの私がよりによってこんな病気になったのか?」といったことばかり。  考えてみても、まったく思い当たるふしが見つかりません。毎年、会社の健康診断を受け、人間ドックに入ってその数値や先生のアドバイスに一喜一憂していたのはいったいなんだったのだろう?あれこれ考えてみてもますます混乱するばかりでした。
 今思うことは、どんなことをしても避けることの出来ない病気があるということで、それは向こうから勝手にやって来るということです。そのように考えるしかないと思うようになりました。
 発病後しばらくして少し落ち着きを取り戻した私は、ベットに横たわり人工呼吸器に繋がれていないと生きていけない現実を受け入れざるを得ないと考えるようになりました。
 そして、このように手足が動かず、なにひとつ自分では出来ない私にも、たったひとつ人並みに自由に出来ることがあるのに気づきました。それは「心をコントロールする」ことです。これだけは手足が動かなくとも、口がきけなくとも自分の意志で自由になります。
 心を上手にコントロールすれば、無限の空間を楽しむことができ、きっと新しい世界が生まれてくるはず。そして「そうだ、私の心に翼をつけよう!そしてこれから知らない世界に向かって大いに楽しもう」と決意したのです。
 それから、一人で悩んでいても展望が開けないので、まずALSに関する情報を集めるため、簡単なインターネットとメール交換が出来る機種を手に入れ、情報を集めました。また一方で、患者団体である日本ALS協会に加入して多摩ブロック会に参加してみました。
 多摩ブロック会に参加してみると、同じ病気を持ちながら病と向き合い生活している方が、私のほかにもたくさんおられると言うことが肌で理解出来ました。
 そして、患者の一人一人がそれぞれに工夫し、またその患者に関わる介護スタッフの方々もそれぞれに工夫を凝らして介護されているのがとても参考になりました。
 例えば、交通手段としての車はどのようなものを使用されているのか?車椅子は?人工呼吸器は?ポータブル吸引器はどんなものを使われているのか?などなど。どれもこれも、みな参考になることばかりでした。
 そうして何回か出席しているうちに、新しくメンバーになった患者や家族の方から質問を受けることもたびたびとなり、私の拙い経験をお話しすることも増えました。それが、初めての方にとっては貴重な情報となったようです。そのことを感じ、私も先輩から情報を受けるだけでなく、自らも発信しようと考えるようになりました。
 また、ALS患者は数が少ないので、一般の方にとってはなじみの少ない病気です。しかし、一人でも多くの方にこの病気を理解していただきご支援を受けないと、患者や家族は安心して生活できないものでもあります。さらに、病気の原因や治療法、治療薬の研究開発も、皆さんのご理解なしに進まないと考えています。
 そして、そうしたことを他人がやってくれるまで待つばかりでなく、患者自身も、出来る人が出来ることを自らやることによって、少しずつでも前進できるのではないか、と思うのです。
 そのような考えの下に、今自分に出来ることはなにか。それは、たとえ拙い経験であっても、それを整理して皆さんにお伝えすることだと考え、ここにペンをとりました。
 はたして目論見どおりにいくか、最後まで辿り着くか分りませんが、諦めないでやってみようといういつもの気持ちで始めました。

長谷川 進


「心に翼を〜あるALS患者の記録〜」
日本プランニングセンター 定価1,200円+税
ISBN:4-86227-003-4 C2047