ALSとはどんな病気?
ALSの症状と生活の変化
筋萎縮性側索硬化症の病状の進行
経過と医療・療養環境
経済的問題
生活をしていく上では、当たり前のことですが様々な費用がかかります。生活費や医療費だけでなく、教育費などがかかる家庭もあると思います。特に生計中心者が病気になった場合は、すぐに直面する問題です。このような経済的な問題を解決もしくは軽減する方法として障害年金、特別障害者手当、傷病手当金、失業給付などの制度活用があります。各制度にはそれぞれに受給要件がありますので、受給するためにはその要件を満たす必要があります(どなたでも利用できるというわけではありません)。経済的なことは、なかなか人に話しにくいことではありますが、制度が複雑でわかりにくいので、病院のソーシャルワーカーに相談して一緒に考えてもらうことをお勧めします。目の前の経済的な問題だけを考えるのではなく、将来的なことを見据えて整理し、対処することが大切です。
移動・介護
下肢の障害で歩行が大変な場合は、杖や車椅子などの用具を使用します。杖や車椅子は介護保険制度が適応になる方はレンタル、介護保険制度が適応にならない方で身体障害者手帳を取得している場合は補装具の交付になります。家の中の移動を容易にするために、段差の解消や手すりの設置などの住環境整備が効果的ですが、家族状況や病状の進み具合などを考慮して、どのような住環境整備を行うか、また住環境整備自体を行うかどうかを考える必要があります。費用は介護保険や身体障害者の制度で補助が受けられる場合があります。
病状が進行して、「食事を自分で摂ることが大変」「入浴の時に体を洗うことが大変」「自分で移動することが大変」などの状況になった時には、まずは家族が介護することになると思います。しかし「介護できる家族がいない」「家族の介護負担を軽減したい」「病状の管理に不安がある」などの場合は、介護保険制度によるホームヘルパーを利用したり、病状によっては訪問看護、往診医を依頼したりします。ホームヘルパーは食事、入浴、移動などの介助をするだけではなく、掃除や洗濯などの家事に関することをお願いすることもできます。訪問看護を定期的に利用すれば、健康状態を定期的にチェックしてもらえますし、相談にものってくれます。往診医は病院まで通院することが病状や身体的に困難になった場合にお願いします。
コミュニケーション
お話をすることが、うまく出来なくなってきた場合は、まずは言語聴覚士の評価と指導を受けます。それでも言葉によるコミュニケーションが難しくなった場合には文字盤を使用してのコミュニケーションをとるようにします。文字盤で日常的な簡単で短いコミュニケーション(「はい、いいえ」「足が痛い」「テレビをみたい」など)を可能にします。しかし、文字盤で長く話をしたり、長い文章で意志を伝えたりするのは大変です。その場合はパソコンを使ってコミュニケーションをとれるようにします。パソコンには家庭用のものから意志伝達装置といわれる特殊なパソコンもあります。ここでは意志伝達装置についてご説明します。
意志伝達装置は長い文書で自分の意志を伝えることを可能にします。また、テレビやエアコンのリモコン操作など環境制御も可能にします。今まで、自分の意志を思うように伝えられず、塞ぎ込んだり、精神的に不安定になったりしていた方が、意志伝達装置を使用することによって、自分自身の生活を前向きに考えられるようになった方もいらっしゃいます。それだけ自分の意志を表出できないことで、その人はものすごい苦痛を感じながら生活しているのです。
意志伝達装置の操作方法は、それほど難しいものではありませんが、パソコンに慣れていない方は大変です。パソコンに慣れていない方はパソコンに触れること自体に抵抗があり、頑なに拒否する場合も少なくありません。そのため、まずは意志伝達装置に慣れるための取り組みや操作の練習を早めに行うことが大切です。意志伝達装置の操作の練習は病院の作業療法士や言語聴覚士、パソコンボランティアの指導を受けながら行うこともできます。意志伝達装置を身近なものに感じられるようにするためには入力装置の選定も重要です。入力装置はいろいろな種類がありますので、どのようなタイプのものにするかは専門家に相談しながら決めることをお勧めします。お体の状態に合わせて、その都度見直していくことが大切です。
意志伝達装置を購入する場合、身体障害者手帳をお持ちの方で障害名が上肢および下肢機能障害1級と言語機能障害3級の場合は日常生活用具として給付を受けることができます(所得に応じて自己負担金があります)。お住みになる自治体によっては、この条件を満たさなくても給付が受けられる場合もあります。身体障害者手帳で日常生活用具の給付の該当にならない方の場合は、特定疾患治療研究事業の日常生活用具として給付が受けられる場合もありますので、保健所に相談をしてみてください。
■共同執筆 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター |
| | 統括診療部長(神経内科)溝口功一先生 |
| (当時 同上) | ソーシャル・ワーカー 中山照雄氏 |
